新人看護職向けコラム
筋肉は裏切らない
「筋肉は裏切らない」。その言葉に刺激されたわけではないが、スポーツクラブに通い続けちょうど一年になる。
先日、トレーナーの入退職があり、今までサポートしてくれた方の退職は寂しくも感じたが、新人トレーナーに対しては、看護管理者時代の職業病が顔をのぞかせ、その成長がどうにも気になってしまう。「笑顔」「言葉がけ」「アドバイス」「雑務」等、受け持つ役割が増えていく姿に成長を感じ、自分も嬉しくなる。
一方で、先輩トレーナーのOJTを横目でみていると、「もっとこのようにしたらいいのになあ」と思ったりもする。
身体を鍛えながら、若いトレーナーたちに、自分の現役時代を重ねて想う、楽しい時間でもある。
私の看護職人生は准看護師からのスタートであった。働き始めの頃で記憶に残っているのは、厳しくも可愛がってくれた大先輩の指導である。掃除の仕方、特にモップの洗い方はこと細かく指示されたものだ。助産師学生の時は、”気付いたら目の前に赤ちゃんがいた”、そんな状況が分娩介助1例目であった。
そんなスタートから約50年が過ぎた。その時間が今の自分を築き上げた、と言ったら大げさだろうか。スポーツクラブのように、ふと看護職だった自分を振り返ることがあり、現役を退いた後もなかなか楽しい人生である。
私は、これまで5つの異なる職場で勤務した。准看護師としては整形外科病棟、助産師資格を取得して産婦人科病棟へ、その後は規模も機能も違う自治体病院と私立病院で管理職を経験した。それぞれの職場で色々な一年目を経験したが、一年目の経験はその後の人生に大きく影響する。一年目をどのような環境で過ごすかが一生を左右することもあると実感している。
その度に命と向き合う意義を伝えるために必要な「社会人としての心構え」と「実践して欲しい看護」の2点を伝えてきた。
また、物事に向かう姿勢、働くことの意義や、何のために、誰のために、職業と職場の選択自由、個人と組織について、組織から得ているものなど、心構えとして常に意識するよう語ってきた。
さらには、普遍的なものと変化するものがある中で、変わらないものを持ち続けるために変わり続ける必要があること。その変わらないものとは、目に見えない思いやり、優しさ、暖かさ、それらを寄り添うという行動で表す仕事が看護職であることなど。くどいと思われようが、何度も繰り返し語り続けてきた。
その言葉がどこまで伝わったかはわからない。しかし、思いとは言葉以上にそれを実行している人の姿によって伝わるものである。なにか掴んでもらえたのではないだろうか。
この先、看護職としてキャリアチェンジすることがあるかもしれない。それはまたあらたなスタート地点である。「これからがこれまでを決める」とも言う。これからとは即ちスタート地点である。
私は腹筋が弱く姿勢がよくない。下半身の筋肉量が平均年齢より少ない。骨粗鬆症もある。退職後、自らのケアを疎かにしてきたことを少し悔いていた。そのため筋肉量を増やし転んでもケガをしないことを目標にトレーニングセンターでスタートを切った。それが私の引退後の”一年目”である。