看護管理者向けコラム
「何のために仕事をするのか」を原点に

私はアナウンサーとしてNHKで働いていた若い頃、視聴者のために現場でずっと仕事を続けたいと思っていましたが、50歳を過ぎた頃には、組織のために必要な管理的な任務を不本意ながら遂行するという境遇になっていました。それまでライフワークとしてきた障害福祉をテーマにした番組に関わることもなくなり、いよいよ「先が見える」という段階に差し掛かっていきます。上り調子の時は充実した「仕事」が「生きがい」を生み、両者は一体となっていましたが、それが困難になるわけですから、間違いなく残念なことです。
しかし、思い返せば、私も諸先輩方からプロとしてのスキルを伝授され、それが「視聴者のため」の放送につながっていたわけです。管理的な立場の人がいたからこそ、私が生きがいを感じられる仕事ができたことを考えれば、次は自分が後輩たちを支えることに力点を置く、それが自分の役割なんだと切り替える年代に差し掛かったことを自覚しました。「後輩を通して、間接的に視聴者のための番組を作る」という考え方が、私の中に生まれていきました。
このように書くと、いかにも優等生っぽくなりますが、正直に言えば、私もスイッチを切り替えるように、あっさりと福祉との関わりを諦められたわけではありません。では、私がどうしたのか。それは、「仕事と生きがいを切り離す」という決断です。福祉をテーマに仕事ができないのであれば、仕事から離れたところで見つければいいわけで、早速私は、休日を利用してフードバンクのボランティアに取り組むことになりました。消費期限前の食品や飲み物を、児童養護施設など必要とする場所へ配送するという社会貢献活動です。「仕事」と「生きがい」を切り離すことは少々残念ではありましたが、支援を必要とする様々な福祉の現場に向き合えたことは、私にとって「何のために仕事をするのか」という原点を再発見する経験にもなりました。
放送以外の世界に視野を広げた私は、定年前に、医療的ケア児と家族のための医療型短期入所施設のハウスマネージャーに転職し、正真正銘の管理職として第2の人生をスタートさせることになります。全く違う世界に飛び込んで苦労の絶えない現場でしたが、「病児と家族のため」という理念を貫くため、辛さや悔しさを抱えながら、なんとか定年まで勤め上げることができました。
困難に直面した時は、ぜひ「何のために仕事をしているのか」という原点に立ち返ってみてください。そこに、解決のヒントが見えてくるかもしれません。

