看護管理者向けコラム
看護のパワースキルとして「おもいやり」

7月10日日本私立系看護大学協議会の50周年記念事業があり、パメラ・シプリアーノ前ICN会長が講演をされました。その中で、思いやり(compassion)は、看護のパワースキルであり、「愛と思いやりは贅沢品ではありません。それらは人間の生存に不可欠なものです」というダライラマ14世のことばを引用して説明されました。人が心身ともに健やかに生き続ける上で、思いやりや優しさが土台になるという教えです。思いやりということばは、2025年に公表された国際看護師協会の看護・看護師の定義の核となる概念です。
この原稿を書いているとき、熊本地震が発災しました。直後から、パメラ元会長も含め、ICNで仕事をした人たちから心配、はげましのメッセージが届いています。Compassionという思いやりのラテン語の語源は、com-patiというともに苦しむところに由来しています。酷暑の中、不自由な生活を強いられる被災した熊本の皆様、そして、最前線で支援をする保健・医療・福祉職の仲間たちのことを思わずにはいられません。
10年前の12月、当時、中小規模病院の看護管理能力の向上という研究に取り組んでいた私は災害時の看護管理者の役割等について情報を収集するため、その年の4月に甚大な地震災害にみまわれた熊本の病院をいくつか訪問させていただきました。病院に電話をすると、スタッフが「部長さん、ゆっくりでいいので、落ち着いて気をつけてきてください。こちらは大丈夫ですよ」という一言や、みんな大変なんだからと、小学校が休校になって行き場のないこどもたちのために病院の会議室を開放して臨時の学童保育をしたり、被害が少なかった施設では近隣のためにお風呂を開放したり、自分のこと、自分の組織のことだけを考えるのではなく、一緒に苦しんでいる人たちのことに思いを寄せて、自分たちのできることに取り組まれていたことがよく伝わりましたし、そのような思いやりは後に、「あの時は、ありがたかった」という感謝の気持ちにかわることが、その後、熊本県での研修で出会ったかたたちから語られたことでした。
熊本県看護協会の玄関を入ってすぐのところに、「おもいやり」ということばを彫刻した大きな石の置物があります。まるで、看護の基盤、おもいやりを、いつも思い出ださせてくれるかのように。今度、熊本に行ったときには、いつ、どうして、この置物が作られ、おかれたのかをぜひ、聞いてみたいと思います。熊本の皆様に心からエールを送っています。

