新人看護職向けコラム
できないことばかりに見えた日々

私は、助産師として総合周産期母子医療センターに入職しました。
入職後に待っていたのは、学生時代には関わったことのないハイリスクな妊産褥婦さんを受け持つ日々でした。知識も技術も足りず、自分の判断が母子の命に関わるかもしれないと思うと、怖くなることもありました。同期の中で一番初めにインシデントを経験して落ち込んだことも、多重課題を前に何から手をつければよいのか分からず、途方に暮れたこともありました。助産師としても、社会人としても1年目。目の前のことに精一杯で、助産師になりたかった自分の気持ちさえ次第に見失いかけていました。それでも、同期や先輩をはじめ、多くの人に支えてもらいながら、なんとか新人時代を過ごしました。
それから月日が流れ、助産師になって5年目の冬。院内を歩いていると、突然声をかけられました。振り向いた先にいたのは、私が助産師1年目の頃、妊娠中に何度も受け持たせていただいた方でした。当時お腹の中にいたお子さんの成長した姿を写真で見せてくださり、懐かしそうに当時のことを話してくださいました。新人だった私は、その方からの質問に答えられず、「確認してきますね」とその場を離れ、先輩助産師や医師に聞きに行ったこともありました。きっと頼りない助産師だと思われていただろうと、ずっと思っていました。
けれども、その方と話すなかで、できないことばかりだった私の関わりも、その方にとって少しは安心につながっていたのだと知りました。当時の私にもできていたことがあったのかもしれない。そう思えたことで、助産師1年目だった自分をほんの少しだけ認めてあげられたような気がしました。
その日のことがきっかけで、新人時代が懐かしくなり、当時のメモを読み返しました。そこには、先輩助産師からかけてもらった言葉が残っていました。
「1年目だから、新人だからといって、何もできないわけじゃない。」
当時の私は、その言葉を聞いても半信半疑でした。でも、今なら少しその言葉の意味が分かります。
新人の頃は、経験を重ねた先輩と同じように判断したり、ケアをしたりすることは、まだ難しいことも多いでしょう。うまくいかなかったこと、分からなかったこと、注意されたことばかりに目が向いてしまいがちです。日々、母子の命に関わる場面に立ち会い、時には厳しく指導され、自信をなくすこともあるかもしれません。でも、できないことばかりに見えるときにも、今のあなただからこそできていることもきっとあります。できなかったことばかりで苦しくなったときには、できたことにも少しだけ目を向けてあげてください。

