コラム
情報担当看護師としての一年目
私が語る「一年目」は、情報担当看護師としての一年目です。聞き馴染みのない方のために簡単に説明すると、情報担当看護師とは、医療現場で活用される様々な情報システムの導入を行ったり、業務を効率的にできるようにシステム運用を調整したり、あるいは質の向上や経営の最適化などにつなげるためのデータを作成したりといった役割をもつ看護師のことを言います。医療現場でもDX(デジタルトランスフォーメーション)の推進が期待されており、今後ますます注目されていく役割だと考えています。
私自身は脳神経外科病棟での看護師経験を経て、この情報担当看護師の役割に就きました。当時は、電子カルテ導入のための病院全体のプロジェクトが始まる年であり、また情報担当が看護部で新たに設置された部署であるということもあり、与えられた役割に身が引き締まる思いと共に、これまでとは異なる分野に挑戦できることに大きな期待を抱いていたことを思い出します。
チーム医療において、看護師はハブ(車輪の中心部)のような役割をもつことが求められます。もちろん病棟看護師としてこのことを実感する機会はありましたが、情報担当看護師という立場では、そのチームが病院全体へと大きく広がり、その中で様々な調整を期待されるのが看護師である(病院のほとんどの業務は看護師を介して実施される)ということを強く感じる場面が多くありました。電子カルテの導入に向け、様々なワーキンググループが立ち上がりましたが、その全てに参画することが求められ、医師、薬剤師や臨床検査技師、栄養士等のコメディカルだけでなく、これまであまり接することのなかった医事課や情報処理課等の事務職、さらには導入業者の担当者と打ち合わせを重ねていきました。打ち合わせの場では初めて見聞きする内容も多く、戸惑う場面もありましたが、迷った時は患者にとってはどのような運用がよいのか、あるいは病院全体で見たときにはどの運用が最適なのかというように、それまでの病棟看護師としての経験で大事にしてきた考え方に倣った判断を意識するようにしていました。このときの経験は今でも大切にしており、情報担当として新たに着任するスタッフに対しても「業務の対象や内容は変わっても、看護師として何を大事にするかという考え方は変わることはない」と繰り返し話すようにしています。
今年、情報担当看護師として「十五年目」となり、臨床での看護師の経験よりも長くなりました。今では、現場の看護管理者や看護スタッフの困りごとを解決するために、簡単なシステムを構築したり、病院や看護部に対して自ら新たな運用を提案したりすることができるようになりました。一般的な看護師とは異なり、情報担当看護師としての私が対応するのは、目の前にいる1人の患者ではありませんが、自身の仕事の結果が共に働く1500人の看護職に影響を与え、それがその先にいる患者につながっているのだということをいつも忘れないようにしています。
